どこかの国の童話にこんな話がありました。 王様が魔法使いに三つの願い事をかなえてもらえるという絶好のチャンスを得ました。 ひとつ目の願いで味をしめた王様は二つ目に、「自分が触る物は何でも金(きん)に変わるようにして欲しい」と願いました。 願いは聞かれ、王様は喜んでいましたが、困ったことになりました。触れた自分の娘が金の像になりました。食事をしようとパンを手に取ると金塊に変わってしまいました。これでは一生食事もできません。 とうとう王様は、残されていた最後の願い事のチャンスを「どうか、この魔力を解いてくれ」と魔女に頼むことに使って元通りにしてもらったというお話です。 この童話は、『私たちは必ずしも自分にとって良いものを欲しがっているとはかぎらない』ということを教えています。私たちは自分にとって本当に益となるものが何であるか知らないことが多いのです。 我が子の家庭内暴力の事でカウンセラーを訪ねたお母さんが、「私には全く原因がわかりません。この子には小さいときから今まで欲しいというものは何でも買ってあげたのに…」と言いました。 このお母さんは、それこそが息子を不幸にした最大の原因だということに気づいていませんでした。『自分の願いが全てかなえられること=幸福』とはならないのです。 ニューヨーク・リハビリテーション研究所の壁に一患者(作者不詳)の詩が記されていて、日本では『病者の祈り』というタイトルで紹介されています。私たちは本当に自分に必要なものが分かっていない(気づいていない)ということを再認識させてくれます。興味のある方はこの詩もぜひ読んでみてください。 『病者の祈り』