(No.13) 火事場の馬鹿力

 

 人は絶体絶命のとき、危機的状況に置かれたときは思いもよらない力を発揮するものです。警報機の鳴っている踏切で脱輪した車を一人で持ち上げた人や、アパートの五階から落ちてくるわが子をオリンピック選手並の早さで走り寄って受け止めた母親がいたといいますから驚きます。  普通の車のエンジンにはリミッターというものが付いていてスピードが出過ぎないようにしてあるのをご存じでしょうか。 これはエンジンの回転数がある程度まで上がると、それ以上にならないように制限する装置です。これは安全のために付けられています。  人間の体も、これと同じように、普段はリミッターがかかっている、と名古屋大学のY教授が言っておられました。 人間の場合は心がその働きをしています。私たちの体を守るために、筋肉の力を制限しているのです。  私たちが今まで「これが自分の限界だ」と思っていたのは、実は自分の心のリミッターによって制限された限界なのです。私たちは最初に述べたような危機的状態にでもおちいらなければ最大限の能力を発揮することはできません。  そういえば自分の子供時代を振り返っても、宿題がなかなかできずに、次の日の朝、登校する直前になってやっと仕上げて出かけていったのを思い出します。危機的状態にならなければ力が出なかったのでしょう。  こんなおもしろい実験をした人がいます。  ノミをコップの中に入れて透明なガラスのふたをしておきます。最初は元気よく飛び上がってガラスのふたにぶつかっていたノミたちも、しばらくすると、おとなしくなってきます。  その後ふたを取ると、ノミたちはコップの外に跳び出そうとしません。コップの口の高さ以上には飛び上がれなくなってしまうのです。  あなたもこのノミたちと同じように、自分で低い限界を作って、自分をつまらない人間にしてはいませんか。

 
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