(No.9)「お金持ちのお嫁さん!」

 

 北國新聞の教育欄に興味深い記事があった。『幼児期のしつけを怠るな』の題に、以下の体験談が続く。 “後に私はドイツで、幼児期のしつけに関して次のような体験をした。  ある家庭を訪問したとき、女児に「大きくなったら何になるの?」と聞いたら「お金持ちのおヨメさんになる」との答え。日本だったら「かわいい」と客が言い、父母もにっこりするところだが、この母親は、私の面前で女児のお尻を強くたたきながら「『すきな人のおヨメさんになる』と言い直しなさい」と叱った。何よりも人の愛情が大切ということを、この時期から教え込むのだ。…”  私はこれを読んで少なからぬショックを受けた。日本では想像できない光景である。これは単なる文化の違いではない。これは『何を一番大切に考えているか』の違いである。  日本のお母さんが前述の母親のようにしないのは子供に甘いからではなく、この女児と同じような考え方を多少なりとも自分も持っているからではないか。そして、そのような考えを別段悪いことと思ってもいない。… (「私はあなたがどんな人でもいいの。ただあなたの収入が気にいったの」といって結婚するのは相手に失礼な話だ)  貧しい家庭の子供はいじめの対象にされやすい。「どうしていじめたりしたの。金持ちも貧乏人も人間は平等よ」などと我が子を叱る言葉がしらじらしい。「勉強しなさい。遊んでばかりいると一生貧乏暮らしよ」と、無意識のうちに繰返してきた『貧乏人=価値が低い』の教育は一夜では取消せない。  心にあるものが自然に口から出てくる。もし自分を変えたければ、本質的に内側から変わらなければならない。

 
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